大規模酪農経営におけるふん尿処理事例

〜安田町(有)あじさい野牧場の取り組み〜



1 地域の概要

 安田町は下越地域北蒲原郡の南端に位置し、磐越自動車道のインターチェンジが設置され、県都新潟市から約30kmと交通アクセスの良い立地となっている。
 主要産業である農業は、水稲単作の兼業経営が主体となっているが、新潟県酪農発祥の地として古くから酪農が盛んで、平成10年に設立した大規模酪農共同経営(あじさい野牧場)を含めて27戸に約1,000頭の乳用牛が飼養されている。



2 (有)あじさい野牧場の概要

 (有)あじさい野牧場は、安田町内の酪農家3戸が出資した有限会社で、成牛頭数約300頭の県下最大規模の酪農経営である。
 共同経営と合理化によるゆとりある酪農経営を目指し、平成5年頃から事業の検討を始め、施設の建設場所の選定等に苦労したが、現在地の借入に目途が立ち、平成9年度畜産再編総合対策事業により平成10年10月に本体施設が竣工し、翌年1月から搾乳を開始している。
 労働力は役員を含めた7名(うち家族外雇用2名)で、原則週休2日体制をとっている。

[施設配置図]



[主要施設](除くふん尿処理関連)

成牛舎

2棟

[3,169m

2]

木造開放型 フリーストール3床、フリーバーン1床

育成牛舎

1棟

[ 513m

2]

木造

搾乳舎

 

[ 325m

2]

成牛舎に併設

(ミルキングパーラー 一式 10頭ダブル、パラレル方式)

飼料庫

1棟

[ 454m

2]

 

機械格納庫

1棟

[ 356m

2]

 

事務所

 

[ 140m

2]

 


3 ふん尿処理の考え方

 生産した堆肥をフリーストール、フリーバーンで敷料として利用するほか、自己草地でも施用する経営内処理を基本とするが、飼養頭数に比較して草地面積が小さく(約8ha)、経営内での還元利用には限度があるため、完熟堆肥を生産して経営外に積極的に販売する必要がある。
 また、ふん尿の分離が困難なフリーストール牛舎であるため、敷料を用いないとスラリー状態となることから、処理はふんと尿の全量及び敷料の混合物を堆肥化処理する必要がある。
 このため、処理対象はふんは水分率が高く、大型ファンを設置して、牛舎(フリーストール、フリーバーン)内での水分蒸発を促進し、副資材の使用量を軽減している。

4 ふん尿処理方式

 当初の計画では、ふんと尿及び敷料の混合物を一時貯留庫に堆積し、これをショベルローダーでスクープ式処理施設に副資材(オガクズ、モミガラ)とともに投入し、1次処理を行い、さらに堆肥舎で、切返しによる2次処理を行うこととしていた。
 しかしながら、施設が本格的に稼動して1年半を経過して、夏期と冬期の処理状況に著しい差異があり(冬期はほとんど水分低下が進まない)、当初整備した施設では、処理(貯蔵)が困難な状況となったため、今年度新たにロータリー式処理施設と堆肥舎を増設した。
 これにより、処理方式を一部変更し、夏期は当初計画通りの処理を行うほか、新設施設で冬期に生産した高水分堆肥の乾燥促進を行い、冬期は牛舎から搬出されたふん尿混合物を既設、新設の両施設に投入し、攪拌発酵処理を行うこととした。

[ふん尿処理関連施設]

攪拌発酵処理施設

2棟

[1,105m

2:32千円/m2] 幅7m、堆積高1.8m、槽長65m

スクープ式連続攪拌装置

2台

@16,380千円

攪拌乾燥・発酵処理施設

1棟

[ 420m

2:12千円/m<font="-1"2] 幅5m、堆積高1.2m、槽長50m

ロータリー式自走型攪拌装置

1台

@18,291千円

堆肥舎(切返し・貯蔵)

1棟

[ 750m2:24千円/m

2]

堆肥舎(貯蔵)

3棟

[ 750m2:15千円/m

2]

ショベルローダー

1台

 


[ふん尿処理フロー]

<夏期>

・スクープ式施設で1次処理した堆肥をロータリー式施設で2次処理した後貯蔵
・ロータリー式施設では、合わせて冬期に生産した高水分堆肥を乾燥し、戻し堆肥を生産

<冬期>

・処理物の容積量が増加するため(牛舎から搬出されるふん尿の水分が高く、水分調整の副資材が増えるため)、スクープ式・ロータリー式の両施設で1次処理した後貯蔵

5 堆肥の生産と利用

 牛舎から搬出されるふん尿と敷料(戻し堆肥)は、日量約24m

3(20t、水分:約85%)でこれに約10m3のオガクズを加え(冬期は更に約4m3のモミガラを加える)、40〜60日間攪拌発酵処理を行った後、堆肥舎で堆積貯蔵する。
 生産される堆肥は日量約16t、年間で約5,800tと見込まれるが、このうち半分の約3,000tは戻し堆肥として牛舎で再利用が可能であるが、残る約2,800tを自己草地での利用と販売に向ける必要がある。

6 今後の課題

 当県においてふん尿の処理(販売を念頭においた堆肥化処理)を行う場合、気象条件等から、施設整備を含めランニングコストが高くならざるを得ない。
 また、共同、個人を含めてふん尿の堆肥化処理が増え、堆肥の流通量が増加してくることが予想され、処理コストを堆肥販売で回収することは困難な状況にある。
 当牧場でも、現在2,000円/m

3(4,000円/t)に運賃(距離により1,500〜2,500円/台)を加えた額で堆肥を販売しているが、副資材のオガクズの購入だけでも同額の経費を要しており、処理コストは経営内の負担となっている。
 しかしながら、ふん尿処理は経営継続のため避けて通れない課題であり、このため安定した販売先を確保することが重要で、このため今年度自走式マニュアルスプレッダーを導入し、希望する販売先に無償で貸し出している。
 今後は、良質堆肥の生産に努めるとともに循環型農業、持続的農業を堆肥供給サイドからもアピールし、耕種農家との連携に積極的に取り組み、販路の拡大を図っていく必要がある。

北蒲原農業改良普及センター 朝比奈 均


あじさい野牧場全景


ふん尿連続型攪拌処理機(サークルコンポ)


ふん尿自走型攪拌処理機(CSランド)




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