開放直線型堆肥化方式(ロータリー攪拌式)による堆肥化処理
田上町 養豚経営  吉澤 博文


1.地域の概要  

 吉澤養豚場のある田上町は、新潟県の中央部北寄に位置し、平野、河川、山などの多様な自然環境を持つ町である。町村では珍しく、羽生田駅、田上駅の二つのJR駅(信越本線)があり、人口も増加傾向にある。農業では、稲作をはじめとして桃、梅、きのこ、レンコンなどの生産が盛んである。工業では金属や木工加工業、窯業(瓦)、ニットなどの生産が盛んである。観光では湯田上温泉、護摩堂山、豪農の館、越後七不思議のつなぎがやなどの多くの観光名所があり近年はゴルフ場でも賑わっている。
 
 およそ17世紀に山麓や才歩川、五社川などの信濃川支流域の集落から発展したとされて現在に至っている。このような中で田上町の畜産農家は点在化しており酪農家4戸、養豚家2戸が田上町の畜産の現状である。したがって、行政も畜産公害には特に警戒しており汚水処理、臭気には厳しい対応をしている。



2.吉澤養豚場の経営概要  

経営形態:  養豚 繁殖肥育一貫
飼養規模:  母豚 100頭 常時飼育頭数 1,000頭
労働力:  本人1人

 吉澤養豚場は県内でも常にトップクラスの成績を得ており、県内の養豚仲間で作る生産集団「あすなろ会」に中心的役割を担っている。養豚の飼養管理はほとんど1人で管理しているため施設・機械装備に関しては機械化とオートメーション化による省力管理方式を採用している。特に肥育豚舎はウインドレスでオールイン・オールアウト方式を取り入れており衛生管理は極めて優れたものがある。


3.堆肥化処理施設・装備の導入経過  

 堆肥化処理施設を導入する以前は、豚糞を発酵処理し堆肥化するための施設が不足し常時堆肥舎が一杯の状態にあり処理に苦慮していた。また、害虫の発生、悪臭の問題等から近隣の住民より苦情が寄せられていた。さらに、良質堆肥が生産できないため、臭いの問題で利用者も限定されるなどの課題もあった。今後80頭の一貫経営を継続するにあたり改善対策が求められた。施設導入に当たっては県外各地の優良事例を視察し利用者の生の声を聞き確かな回答を得られたものを選定した。また、畜産環境整備リース事業により個人でも助成が受けられるようになったことから施設装備の導入に踏みきっている。施設選定に当たっては、労働力・資金が限られた個人経営であることから、維持管理のし易さと処理能力の安定性を重視した。また、出来上がった製品が販売可能なのかも重視した。



4.導入事業  

事業名: 平成10年度 畜産環境整備リース事業(1/2助成)
再借受者: 全国農業協同組合連合会 新潟県本部
事業費: 27,357千円
内訳:

発酵装置
発酵舎 

15,153千円  貸し付け期間5年
12,204千円  貸し付け期間12年
  (国補助1/2、受益者負担1/2を貸し付け期間中にリース料として支払う)
装置名: CMコンポ−5−1500型
製造メーカー:

(有)CMメンテナンスサービス(千葉県)

販売代理店: (有)ハーベストジョイ


5.家畜排せつ物の処理方法  

1. 固液分離処理の状況(該当に○)
  、すべて分離 イ、一部分離 ウ、混合処理 エ、その他
2. 固形分の処理(堆肥化処理)
  開放直線型堆肥化方式(ロータリー攪拌式)にて処理
3. 液体(尿・汚水)の処理
  くみあい浄化槽・活性汚泥方式により処理
4. 処理フロー図
 1. ふん処理

 2. 尿処理




6.堆肥化施設の概要  

導入施設:開放直線型堆肥化施設(ロータリー攪拌式)

1.選定のポイント
 1.全自動で運転が簡単
 2.水分調整材は不要
 3.消耗品が低価格
 4.完熟堆肥で尿散布が可能
 5.脱臭装置が付属品として付いている

2.堆肥化までの工程
 畜舎にてふん尿固液分離後、コンベアにて開放直線型堆肥化方式(ロータリー攪拌式)の発酵処理施設にて堆肥化。施設の一部はエアレーション装置が配備されている。
 
 発酵槽に完熟堆肥を1mほど敷き詰めておく。固液分離した糞(糞尿混合状態)をコンベアによりタンクに投入し堆積物の上部に散布する。ロータリー式攪拌装置にて自動運転し攪拌する。1日に約40cm堆積物が移動する。装置は運転を始めると発酵槽の床10cmの高さまでロータリーが降下し攪拌する。負荷がかかり過ぎるとロータリーが自動で上昇し負荷を和らげる。攪拌により下部の堆肥が水分調整され、戻し堆肥の役割を果たし投入糞の発酵を円滑に進める。これらの作業がすべて自動で行われ約120日で完熟堆肥が製品化される。粒状堆肥と粉状堆肥を機械にて区分しそれぞれを袋詰め機械で製品にする。堆肥はすべて袋詰めにして年間1万袋を販売している。利用者の評判は良好で副資材も使わず、水位も15%程度で使い勝手が良いとの評価を得ている。
 
 なお、撹拌時に出る臭いを取り込み木酢液に吸着させて排出する脱臭装置も装備している。

3.堆肥の販売
 現在は秋田県大潟村の無農薬有機米栽培グループと年間利用販売契約を結び約3千袋を販売している。また、町内及び近郊の果樹農家、施設野菜農家、水稲(育苗)農家に生産された全量を販売している。販売は年間約1万袋程度。
 
 製品の需要は高く、現在は堆肥の生産が追いつかず新規の申し込みはお断りしている。特殊肥料生産業者並びに肥料販売業務の届出により新潟県より認可されている。


7.取り組みの成果、今後の課題  

1.成果
 以前は豚糞を堆肥化するための施設が不足し、常時堆肥舎が一杯の状態にあり処理に苦慮していた。また、害虫の発生、悪臭の問題等から近隣の住民より苦情が寄せられていた。さらに、良質堆肥が生産出来ないため、臭いの問題で利用者も限定されるなどの課題もあった。今後養豚経営の継続が困難な状況に追い込まれていた。
 
 現在は周囲からも苦情は一切なく、良質堆肥の生産が追いつかないほどの需要がある。
 
 このことから、本業の豚飼養管理に専念できることが最大の成果である。
  

2.課題
 製品の需要が高く供給が追いつかない状況にある。養豚経営の規模拡大により供給を増やすことも考えられるが、経営内容等を考えた場合無理が出来ない状況にある。
 
 労力的な面の負担を軽減するために、雇用労働力を入れる考えもあるが経営の収益性の面で現在検討中である。

 

 

 


畜舎全景

環境に配慮したウィンドレス豚舎

開放直線型堆肥化方式

ロータリー攪拌機

製品堆肥

製品堆肥を運ぶ油圧式ハンドパレットトラック
( 手動フォーク)

 

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